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これでわかる!Zoho CRMと外部アプリ連携_実践編

2021 03 01 08:16 AM
前回はZoho CRMのもつ外部連携について機能や連携手法を説明しました。
今回は連携機能の要件定義、連携事例、連携実装の手順について、弊社の経験をベースにお話しします。

連携機能を使いたい時の準備:要件定義

連携機能を利用するときには要件を整理し最適な方法を検討する必要があります。
Zoho CRMのメインターゲットである多くの中小企業が専属ITチーム持っていない場合、
連携のための準備プロセスである要件定義行うことに対してもハードルがあります。
要件定義には、
業務的な観点でどのようなことを実現したいかを設計するビジネス要件定義
システム的・技術的観点からのシステム要件定義の2種類があります。
Zohoは前回お話ししたようにZohoアプリケーション同士であれば簡単な設定だけで連携させることもかのうですので本格的なシステム要件定義をせずに実装へと移ることも可能です。
この点を踏まえて、要件定義のステップを説明します
1. 連携タイミングとサイクル

いつ、どのデータを、どこからどこへと連携させるか、またその頻度はどれくらいか?を定義します。
これはそもそものボタンの掛け違いをなくすということもありますし、システムや業務オペレーションへの負荷を見極める意味でも必要です。

不要なデータは不要な箇所には連携しないという鉄則を明文化していくことが必要です。

またシステム負荷については、Zoho自体クラウドで運営されているため速度のチューニングためのデータベース設定などユーザー側が気にすることはないのですが、契約プラン(Zoho CRMのエディションやユーザー数)などにより連携実行可能件数の制限がありますので、できる限りその制限内で処理できるように設計する必要があります。
実行可能件数は1日2000件までなどでプラン説明のページに記載されています。
2. 連携先アプリの利用プロセスとメンバー

Zoho CRMは主にマーケティング、セールスのメンバーが利用しているアプリケーションになってくるかと思いますが連携先のアプリケーションはどうでしょうか?
経理、総務、製造部門の部署の場合は請求書や工程管理などのアプリケーションの場合があると思います。
Zoho CRMのデータは項目設定されていても、部署が違えば、またアプリケーションが違えば同じ内容のものでも違う言葉で利用されている情報もありますし、業務の手順上どこで必要になるか?も念頭においた設計が必要となります。

必要なタイミングで必要なメンバーに最短のプロセスで利用してもらうように設計します。

そのためには既存の業務プロセスの変更も生じてしまうこともありますが、客観的に生産性の高いプロセスに切り替えてください。
おそらくこの部分が最も労力を使う部分になるかと思いますが、ITツールを利用した業務改革(デジタルトランスフォーメーション)を実現したい場合、過去の因習に囚われずバッサリと無駄なプロセスをカットすることも必須です。

作業のための作業はなくしていくという気持ちの切り替えを行ってください。

例えば承認プロセスを実装する場合に、実際の承認者以外の閲覧などのルートは無くす(=そもそも承認者が内容を確認すべきです)などとなります。
3. 連携データの上流・下流・片側・双方向などの連携方向

これはシステム的なことも踏まえてとなりますが、1で連携のタイミングやサイクルを定義すると自然に上流(データを渡す側)、下流(データを受け取る側)がみえてくる内容になってきます。

ただし連携の方向については注意が必要です。

例えば Zoho CRMから基幹システムへ取引先データを連携させる時、基幹システム側で取引先にコードを付与している場合など、そのコードはZoho CRMに書き戻す必要はあるか、ないかなどの確認をしてください。この場合、取引先コードをZoho CRMで作成するデータに埋め込み既存顧客かどうかを識別するなどを考えている場合は必要となります。

無論、単に既存顧客かどうかの識別程度であれば選択肢項目の取引先の種類を見ればわかるということもあります。

したがって、情報の粒度により書き戻す基準は決まるケースもあるというのが検討の基準の一つと言えます。
4. データの構造と項目のマッピングと連携のキー項目

システム的な観点での設計となります。
Zoho CRMが上流となりデータを渡す場合より受け取り時に影響することが多いかと思います。
これは、前回お話ししたZoho CRMの連携自体が多彩なため、データ自体は自由度高く渡せるためです。
まずデータの構造ですが、Zoho CRMは例えば取引先と商談、取引先と連絡先、連絡先と商談の関係は1:nの関係となっています。
ひとつのデータに複数の紐づくデータを設定可能です。
そのため紐づく先のデータが先に存在している必要があります。

例)商談を作る際には取引先が先に存在している必要がある。

これを踏まえると大元のデータを先に連携させないと紐づく先のデータは連携できないということになります。
(ただしこちらは運用上での回避策もあります)

また連携先が取引先と商談情報をセットで案件情報として受け取る場合はレポート機能で作成するような複数のタブが合成された集計表のようなデータセットとして定義するケースもでてきます。

項目のマッピングとは、どの項目を相手のどの項目として連携させるかの対照表を作成するということになります。

例)取引先コード=得先コード

連携のキー項目はデータの構造とも関係してくる項目です。
取引先が名寄せされていない場合などでも取引先のコード自体が同じであれば同一の取引先とみなし、それを連携のキーとして紐づけるデータを確定させるということになります。
この考え方は既存のスプレッドシートからのデータ移行(インポート)でも必要になってきます。

例)連絡先の担当者=メールアドレスをキーに紐づける

取りまとめ結果は対象データ、対象データの対照表のリストとしてまとめます。
5. イレギュラーパターン

これは想定している流れ以外の連携の手順は発生しないか?などの検討です。

例)Zoho CRMで請求書を作成して、会計システムに引き渡す場合にもしその請求書がキャンセルになったらどうするか?などです。

この場合、再度請求書のステータスをキャンセルにして連携し直すのか、会計側でキャンセルを手入力して逆にもどすのか?などを検討します。

いずれにせよ連携ができてもイレギュラーパターンは頻度は別として発生することを念頭に置いてオペレーションでカバーするケースもあるということを理解ください。

すべてを網羅することはできません。
6. (番外編)データレベルか集計レベルか?

連携がどうあるべきか?というポイントにも繋がりますが、1で連携タイミングやサイクルを検討した場合、例えば年に数度、レポートとして結果を見れればよいという連携であれば、無理にリアルタイムの連携を実装する必要はありません。ましてはZoho CRMで見る必要もあるのか?ということもありえます。

データレベルの連携はプロセスレベルの連携と言い換えることも可能です。

すなわちプロセスごとの必要なデータを都度連携させ、適宜閲覧、加工して利用するケースですが、
集計レベルとは特定のタイミングで集計的に表示させるだけの連携です。

この場合はZoho AnalyticsなどのBIツールを利用してレポート上でデータが合成、集計されていれば実質連携はできていると考えて良いと思います。
ただしこの集計作業に工数がかかるのであれば普段からのオペレーションレベルで連携は済ませておくというのが判断基準となります。
Zoho Analyticsは外部データの取り込み機能も強力ですのでZoho CRMとあわせて利用することで強力な顧客データ分析が可能となります。

余談にはなりますがZoho CRM UltimateエディションにはZoho Analyticsの簡易版が付属されますので、データ分析を強化したいのであればおすすめです。
これ以外にも要件定義のポイントはありますが、まずは上記の代表的なポイントをおさえていただければおおよそ機能レベルでどうあるべきか?は見えてくると思います。

Zoho CRM連携事例

さて、ここからは実際の連携事例ですが、
Zohoアプリ同士の連携、Zohoとその他のクラウドアプリでの例を挙げてみます。
Zohoアプリケーション間での連携事例

以下のメニューはZoho CRMの設定メニューから実装可能なため非常に簡単な手順で利用可能です。、データ分析を強化したいのであればおすすめです。
Zoho CRMと Zoho Desk:データの作成と更新
  • Zoho CRMで作成した取引先、連絡先をZohoDeskと連携、同期することでZoho Desk側でのチケット登録時にCRMの情報を紐づけることが可能。
  • 商談などもZoho Deskで表示できるのでどのような顧客からの問い合わせなのか?を営業担当者に毎回聞かなくても良い。
  • Zoho CRMの連絡先の関連リストにZoho Deskのチケット情報も表示されるので、顧客に連絡する際に最近の問い合わせ状況を確認することで円滑なコミュニケーションを図ることも可能です。
Zoho CRMとZoho Campaigns
  • Zoho CRMの見込み客、連絡先をZoho Campaignsの連絡先リストと同期することで送信先として利用することが可能です。
  • Zoho Campaignsで実施した個々のメールの反応をZoho CRMでも確認し利用することが可能です。これにより先週のメルマガを開封した人などの条件でのリストビューも作成できます。
  • またZoho Campaignsでのメールキャンペーンも Zoho CRMのキャンペーンタブのレコードに同期することや、Zoho CRMのキャンペーンタブからメールキャンペーンを直接展開することも可能です。
Zoho CRMとZoho Books
  • Zoho CRMの取引先、連絡先、仕入先、商品を会計アプリケーションであるZoho Booksに同期します。
  • またZoho CRMの取引先、連絡先、商談の関連リストにZoho Financeの名前でZoho Booksの見積書、受注書、請求書を関連づけて作成可能です。(その際にはZoho CRMの見積書、請求書、受注書タブを非表示にします)
  • また商談のステージと連動して自動的に見積書の作成、請求書のステータス変更なども可能です。
  • この連携によりモバイルアプリだけでも見込み客の登録から見積書の送付まで一気に可能です。
  • 弊社もお気に入りの連携です
Zoho CRMとZoho Meeting:データの統合
  • Zoho CRMの見込み客や連絡先の画面から直接Zoho Meetingを利用したオンライン会議の招待状を送付することができます。
  • Zoho Meetingの持つウェビナー機能との連携も可能です。キャンペーンタブから直接ウェビナーをセットアップして、登録ページの作成と案内まで可能です。
Zoho CRMとZoho Cliq:通知メッセージの送信
  • Zoho CRMがもつワークフローのルールで通知のアクションを選んだ時にZoho Cliq経由での通知を作成
  • 各データの画面からZoho Cliqにメッセージを添えてリンクを送信できます。
これによりメールに頼らない社内コミュニケーションの仕組みが実現されます。

カイトの推奨する初期設定サービス

上記連携はZoho CRMの設定>マーケットプレイス>Zohoにて設定可能です。

設定にはいくつかのコツがあるのも事実ですが弊社ではベストセッティングにて初期設定を実施するサービスもございます。
ZohoアプリケーションとZoho以外のアプリケーション間での連携
Zoho以外のクラウドアプリケーションとの連携は難易度が上がりますが、一度実装すれば業務効が激変します。
Zoho CRMとSansan連携
  • 連携内容:データの作成と更新
  • 実装に必要なもの: Zoho Flowとカスタム関数
  • 名刺管理アプリケーションであるSansanとの連携です。
  • Sansanで名刺が作成・更新されると Zoho CRMの見込み客に名刺を作成・更新する連携です。
この連携には ZohoのもつiPaas型のクラウドインテグレーション(クラウド連携)ツールであるZoho Flowを利用します。 Zoho Flowは著名どころのクラウドアプリケーション同士を連携させるコネクタを作成することができるツールです。基本はドラッグ&ドロップで設定し、条件などはカスタム関数というZohoのもつプログラミング言語を利用して処理することが可能です。
こちら見込み客以外にも連絡先との連携も可能ですが弊社推奨は見込み客との連携です。
Zoho CRMとスマレジ連携
  • 連携内容:データの作成と更新
  • 実装に必要なもの: APIを利用するためのカスタム関数実装
  • クラウド型のPOS(レジキャッシャー)システムのスマレジとの連携です。
Zoho CRMの連絡先をスマレジの店舗会員データと同期したり、スマレジのレシート情報をZoho CRMに取り込む連携です。
この連携で会員の購買分析が可能となり、購買状況別の施策を実施可能となります。
消費者向けの小売業においては非常に強力な連携となります。
Zoho CRMとMoneyForward請求の連携
  • 連携内容:データの作成と更新
  • 実装に必要なもの: APIを利用するためのカスタム関数実装
  • Zoho CRMの取引先と請求書データをMoneyForward請求書に同期します。
営業チームで見積書から請求書を作成し、確定したデータを経理側で利用するMoneyforward請求書に送り込むことで取引先データの二重入力や、請求書のタイムリーな連携を行い業務分担を最適化します。
Zoho CRMとfreeeの連携
  • 連携内容:データの作成と更新
  • 実装に必要なもの: APIを利用するためのカスタム関数実装
  • Zoho CRMの取引先と請求書データをfreeeに同期します。
営業チームで見積書から請求書を作成し、確定したデータを経理側で利用するfreee請求書に送り込むことで取引先データの二重入力や、請求書のタイムリーな連携を行い業務分担を最適化します。

会計アプリとの連携注意点

MoneyForward、freee連携でのポイントはデータの持たせ方がツールの役割により異なることを注意することです。
会計側は書類と口座、CRMは商品と顧客視点であるということに気をつける必要があります。

Zoho CRMとSlack
  • 連携内容:Slack経由での通知
  • 実装に必要なもの: Zoho MarketplaceでのSlack連携機能のインストール or カスタム関数
  • Zoho CRMとSlackを連携させることで通知を自動化することが可能です。
Zoho Cliq連携とほぼ同じ内容が実装可能です。
Zoho CRMとShopify連携:データの作成と更新
  • 連携内容:データの作成と更新
  • 実装に必要なもの: Zoho MarketplaceでのShopiy連携機能のインストール or カスタム関数
  • オンライン通販アプリのShopifyとZoho CRMの連携です。
Shopifyのオーダー情報と購入者情報をZoho CRMの受注書と連絡先に同期します。
スマレジ連携と同様に購入者分析も可能となります。

上記事例はあくまでの各アプリごとの連携の一例です。

さまざまな利用条件により連携内容を変更して対応することも可能です。

基本的な連携と個別対応

上記事例はあくまでの各アプリごとの連携の一例です。
さまざまな利用条件により連携内容を変更して対応することも可能です。

連携実装の手順

要件が整理できれば、実装となりますが基本は

  1. 連携項目の設定:アプリケーション同士でのデータ連携の要件定義で検討した項目同士の付き合わせができるようにZoho CRMの項目を確認、作成します。特にデータの型(選択肢の値、通貨の桁数、テキストの文字数など)が合致しないと連携でエラーが発生しますので注意ください。
  2. 連携の実装:カスタム関数の作成や、Zoho Marketplaceからのインストールなどです。
  3. 連携テスト:連携の方向に従って上流になるアプリケーションからデータ入力し連携が実施されるかどうか、またタイムラグの確認を行います。また実装方法にもよりますが、連携タイミングは個別で任意、複数で任意、自動で起動などの発動条件別のパターンもおさえてテストするようにしてください。

連携での注意点

Zoho CRMのEditionの確認
  • Zoho アプリケーション同士であればZoho CRM Professionalでも実装可能なものがほとんどですが、外部アプリケーションとの連携であればカスタム関数やカスタムタブを利用するケースが大半になりますのでEnterprise Edition以上のプランが必要となります。


連携先のアプリケーションのプランの確認
  • Zoho CRMと同じくAPI機能の利用など外部連携に対応したプランが必要です。また連携数によっても対応するプランが異なる場合があります。


連携する処理ボリューム
  • プランと関連しますが1日あたりの最大連携実行数などは事前に算出しておいてください。

例)請求書を外部アプリケーションとリアルタイムで連携させたい場合、10人の営業担当者が一人それぞれ2件の請求書を作成する場合、20件/日の処理は最低発生します。


連携設定するユーザー
  • Zoho CRMで連携設定を作業するユーザーは組織の管理者で実行してください。
  • また組織の管理者は社員に直接紐づかないメールアドレスで別にユーザーを用意していただいたほうがベターです。これは担当社員が退職した場合は組織管理者を変更したり連携の設定で必要なAPIキーという認証情報の変更が必要になるからです。役職や担当に紐づかないユーザーのほうがこのあたり楽になります。


連携≠目的
  • もっとも大事なことは連携実装自体が目的ではないということです。
  • 連携より手作業のほうが早ければそちらでオペレーションは実行したほうがよいということです。
  • 連携は効率化を求めてのものだとは思いますが、先に述べたように“そもそも”不要なプロセスであれば連携自体も不要です。
  • 目的が社内のためのものか、顧客のためのものか?に応じて連携させるべきか否かは判断ください。
弊社では上記の連携実装を機能的にも、また標準化されたプロセスでの知見も合わせてコンサルティングでご提供しております。
ご興味ございました、ぜひお問い合わせください。